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Birth of OLFA cutter

Birth of OLFA cutter

01 カッターナイフの

岡田 良男

1931-1990 YOSHIO OKADA


1931年(昭和6年) 4月14日生まれ
1944年(昭和19年)3月 南大江国民学校卒業
1956年(昭和31年) 折る刃式カッターナイフ発明
1967年(昭和42年)6月 岡田工業株式会社(オルファ株式会社の前身)設立
1986年(昭和61年)4月 黄綬褒章 受章

趣味 ナイフコレクション・旅行・絵画

幼少期の良男(左)とその姉弟
幼少期の良男(左)とその姉弟

岡田良男は、生家が紙の断裁業を営んでいたこともあり、刃物が大好きな少年だった。
金属を切るノコギリの折れたものなどを、近所の自転車店の前で拾い集めては研いで好きな形に変え、自分の道具にしていた。良男は家計を支えるため、電気工事や機械修理など様々な職を経験したが、印刷所に勤めていた時に『折る刃式カッターナイフ』を考案する。当時の日本製の洋刃物はドイツ製やスウェーデン製などと比べて材質が悪く、切れ味の持続性が劣ることを非常に残念に思っていたことも、折る刃式カッターナイフを考案するきっかけとなった。そして日夜研究の結果、発明に至った折る刃式カッターナイフは、その欠点を見事に解決する日本発祥の刃物手道具となった。

社員と共に商品を試す良男(中央下)
社員と共に商品を試す良男(中央下)

良男は学歴が乏しかったにもかかわらず、卓越した独創力を有し、会社にあっては、自ら先頭に立ち、全員の原動力・推進力となって、社内外から大きな信望を集めた。
そして自らの生涯を費やす決意の下、仲間たちと共に歩み続けた。
のちに良男は、「刃物・手道具づくりが自らの天職だ」と語っている。

ナイフについて語る良男
ナイフについて語る良男

このようにオルファ株式会社の誠実にして、積極的な活力溢れる社風を自ら形づくったとともに、常に製品の改善、能率の向上などに傾倒していたことは、幾多の新製品の開発と事業実績によって立証されている。
世紀の発明となった折る刃式カッターナイフは、品質の高さにこだわった姿勢にも後押しされながら瞬く間に世界中に広がり、今日も多くの人々に愛用されている。

02 カッター物語はこうして始まった

Dawn

良男は、別の印刷会社に勤める弟の三朗から相談を受けた。
「兄ちゃん、紙を切るええナイフないやろか」
当時の印刷会社では紙を切るときにカミソリ刃を使っていたが、刃を指でつまんで切ることが危険なうえ、刃先の切れ味が落ちるとそのまま捨ててしまうため、無駄が多かった。

そんな当時、路上の靴職人たちが刃物代わりにガラスの破片を使って靴底を削り、切れ味が悪くなってはその都度石で割って使うことを知っていた良男は、あるアイデアを思いつく。戦後に青年時代を過ごした良男は、アメリカ軍の兵隊がかじっていた板チョコを思い出した。「そうか、板チョコのようにあらかじめ折り筋を入れておき、切れなくなったらポキポキ折れば1枚の刃で何回も新しい刃先が使えるぞ!

カッターナイフが世界へ広がっていく物語の夜明けである。

Birth

折る刃式 第1号(試作品)
折る刃式 第1号(試作品)

アイデアに自信のあった良男は、当時の工業試験所で「刃物の80%は切っ先を使うものだ」という言葉を聞いたことで新しいナイフの成功に確信を持ち、試作品の製作に取りかかった。試作を何度も繰り返し、折線のピッチ、深さ、焼き入れ硬度、研磨精度、そして現在まで受け継がれる刃の角度“59度”の答えを導き出した。試行錯誤のうえ、良男は1956年(昭和31年)に長さ約13センチ・幅約1センチ・折線のピッチ約5ミリの、世界で初めてとなる『折る刃式カッターナイフ』の試作品を完成させた。

3000 本の手直しをする良男
3000 本の手直しをする良男

その後実用新案(のちに特許)を取得したものの、製造するための資金がなかったため、大手メーカーに製造をお願いしたが、「刀折れ矢尽きる」ということわざがある通り、「刃物は折れたらダメ」「こんなモノ作っても売れない」と散々な反応で、どこも相手にしなかった。
良男は仕方なく自らの資金で作ることを決意。カッターナイフづくりに取りかかった。ところが町工場のプレス加工業者に発注した3000本は仕上がりもバラバラで、刃が通らないものもあったそう。良男は「自分で手直しするしかない」とペンチ・カナヅチ・ヤスリを手に一本一本手直しをし、3カ月かけて商品として仕上げた。折る刃式カッターナイフの誕生である。

商品化 第1号(手直しした3000本のうちの1本)
商品化 第1号(手直しした3000本のうちの1本)

03 オルファ黄色に込められた想い

折る刃とオルファ

昔の国内外のオルファロゴ
昔の国内外のオルファロゴ

折る刃とオルファ

1967年6月8日、弟の三朗・四郎・博、そして妻の輝子と共に、岡田工業株式会社を設立。のちの社名となるオルファという名前も初めてここで登場した。折る刃式のカッターなので『OLHA』とするところを、『H』を発音しない国もあるという理由から『H』を『F』に変えて『OLFA』をブランド名とした。折る刃式のカッターナイフは必ず世界に通用するのだという確信を持っていた良男ならではの発想といえる。
その17年後の1984年(昭和59年)、商号を現在の社名である『オルファ株式会社』に変更した。

オルファの黄色

海外 L型とA型 昔のチラシ
海外 L型とA型 昔のチラシ

オルファの黄色

カッターナイフが生まれた当時の工具は、どれも色のない無機質なものばかりだった。刃物は工具の中でも特に扱いに注意が必要とされる。そこで良男は工具箱の中でも目立つ黄色にすることで、刃物であるカッターナイフで不意に怪我をしないように…という想いを込め、色味も“たまごの黄身” のように温かみのあるものを選んだ。
そして、1967年発売の『A型』と『L型』に初めて黄色を採用した。
刃物手道具において、品質は使い手の安全に大きく影響される。オルファは常に安全性を最も大切にすることを品質へのこだわりとし、それをコーポレートカラーである黄色で表している。

04 世界へ拡がるオルファ

ロータリーカッター

良男が初めて世に送り出した革新的な道具は、折る刃式カッターナイフだけではない。
オルファは1970年代当時、布を切るためのカッターナイフとして『マルカッター』という商品を発売していた。これは、円形刃をゴム質の円板ではさみ込み、ゴムで布地を押さえながら切るというものだった。この構造は自動車のタイヤから着想を得たものだが、当時の円形刃は転がしながら使う構造ではなく、“切れなくなったら少し回して新しい研ぎ面に切り替える”という、折る刃式カッターナイフに通じる考えのもと設計したものだった。
しかし、刃先の見えない構造では切りたいライン通りに本体を操作できなかったため、改良の必要性を感じた良男は、マルカッターに長いグリップをつけるなど試行錯誤を重ねた。

そして、折る刃式カッターナイフ誕生から23年後の1979年。本体は長めのグリップを採用し、刃を転がしながらカットするという機能を実現した世界初の『ロータリーカッター』が誕生した。円形刃のダイヤル式の刻印は、マルカッターの名残である。発売後は北米のキルターに次第に浸透しはじめ、今ではカッターナイフ同様、世界中の裁断の現場で選ばれている。

ロータリーカッター

ロータリーカッター ロータリーカッター

デファクト・スタンダード

発明当時、良男の考案したカッターナイフは国内特許しか取得していなかった。
そのため、海外の大手工具メーカーは同じ規格でカッターナイフを製造し、市場に参入したことで、図らずもカッターナイフの存在や便利さが急速に世界中に広がっていくことになった。このことにより、当時良男が決めた折線の角度や刃幅の数値などは、現在でもカッターナイフの事実上の世界標準規格(=デファクト・スタンダード)となっている。

現在では世界100カ国以上へ輸出されているカッターナイフは、販売中のものだけでも100種類以上。多くのメーカーがカッターナイフを販売している中、オルファはパイオニアとして今日も市場をリードし続けている。

デファクト・スタンダード

デファクト・スタンダード